症状別案内


甲状腺の病気を疑う症状
甲状腺について
甲状腺ホルモンとは
甲状腺は食物などに含まれるヨード(ヨウ素)を主原料として、甲状腺ホルモンを合成し分泌しています。
甲状腺ホルモンは主として体の新陳代謝をつかさどっています。甲状腺ホルモンが多いと全身の代謝が亢進し甲状腺機能亢進症になります(その主な病気がバセドウ病です)。
逆に、甲状腺ホルモンが少なくなると全身の代謝が鈍くなり、甲状腺機能低下症になります(その主な病気が橋本病です)。
甲状腺ホルモン(T3とT4の二種類があります)は脳下垂体から分泌されるTSH(甲状腺刺激ホルモン)の刺激によって分泌されます。
例えば、バセドウ病でT4の分泌が亢進していると、脳下垂体からの刺激が必要無くなるためTSHは低下します。
甲状腺の病気を疑う症状
(以下の項目で3つ以上当てはまれば検査をお勧めします。)
糖尿病(1)甲状腺機能亢進症
- 暑がりである
- 疲れやすい
- 発汗が多い
- 動悸や息切れがする
- イライラする、集中力の低下
- 体重減少
- 手足の震え
- 目つきが鋭くなった、眼球が飛び出しているよう
- 首(のどぼとけの下付近)が腫れている
(2)甲状腺機能低下症
- 元気がない(やる気が出ない)
- 皮膚が乾燥している
- 寒がり
- むくんできた
- 頭髪や眉が薄くなってきた
- 便秘がひどい
- 物忘れが多い
- 体重が増加
- 脈がゆっくり
甲状腺の検査について
(1)甲状腺ホルモン測定
甲状腺ホルモン量の測定は遊離サイロキシン(FT4、フリーT4)と遊離トリヨードサイロニン(FT3、フリーT3)を調べます。
甲状腺機能亢進ではそれらの値が高くなっている場合が多く、甲状腺機能低下では低くなっている場合が多いです。
(2)抗甲状腺抗体測定
抗甲状腺抗体とは自分の甲状腺を誤って異物と認識した結果生じるもので、バセドウ病や橋本病で検出されます。
バセドウ病の診断には抗TSH受容体抗体(TRAb)を、橋本病の診断には抗サイログロブリン抗体(TgAb)と抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)を調べます。
(3)甲状腺超音波(甲状腺エコー)
甲状腺の形・大きさや甲状腺内部の腫瘍の有無などを調べるために行ないます。
必要な方は藤沢市保健医療センター(大庭)等で行なっていただきます。
(4)甲状腺CT、MRI
腫瘍が大きい場合や食道や気管への圧迫の有無を調べるために行ないます。
必要な方は藤沢市民病院等で行なっていただきます。
(5)甲状腺シンチグラフィー
甲状腺の形・腫瘍の大きさ・機能を調べるために行ないます。
必要な方は藤沢市民病院等で行なっていただきます。
(6)穿刺吸引細胞診
甲状腺腫瘍内に細い針を刺して細胞を取り出し、良性か悪性かの判断をするための検査です。
必要な方は藤沢市民病院等で行なっていただきます。
甲状腺の病気 バセドウ病
バセドウ病について
(1)バセドウ病とは
からだの免疫の仕組みに異常が起こり、甲状腺を過剰に刺激する物質(抗TSH受容体抗体:TRAbと言います)が作られて甲状腺ホルモンの分泌が多くなりすぎる病気です。
過剰な甲状腺ホルモンによって以下のような症状が出現してきます。
- 甲状腺の腫れ→腫れの程度はさまざまです。
多くは甲状腺全体が大きくなります。 - 眼球突出→バセドウ病の約3割に認められると言われています。
多くは両眼に認められ、眼瞼の腫れ・結膜の充血・目の痛み・複視(物がだぶって見える)を生じる事があります。 - 甲状腺機能亢進による症状→暑がり・疲れやすい・多汗・動悸・息切れ・イライラ・体重減少・手の震え
(3)検査
症状と血液検査でおおよそ診断はつきます。
血液検査で甲状腺ホルモン(FT3、FT4)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)ならびに抗TSH受容体抗体(TRAb)を測定します。
(4)治療
過剰に分泌している甲状腺ホルモンを正常に戻すことを目指して治療します。
治療法として薬物療法・放射性ヨード内服療法・手術があります。我が国では薬物療法が最もよく行なわれています。
しかし、それぞれの治療法には以下に示すような長所・短所があるため患者さんの状態に応じて主治医と話し合って決めていきましょう。
薬物療法 | 放射性ヨード内服療法 | 手術 | |
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方法 | 抗甲状腺薬内服 | 放射性ヨードの入った カプセル内服 | 甲状腺切除術 |
対象者 | 全ての人 |
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長所 | 全ての人に容易に行なえる | 薬より早く治療が済む | 薬より早く治療が済む |
短所 |
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(5)薬物療法について
甲状腺ホルモンの合成を抑える働きのある薬(抗甲状腺薬)を内服します。抗甲状腺薬にはメルカゾールとプロパジールの2種類がありますが主にメルカゾールを使います。
(メルカゾールで副作用が出た場合や授乳中の人にプロパジールを使います。)
メルカゾールは初め1日3~6錠内服し、甲状腺ホルモンの改善を見ながら減量してゆきます。
大抵は服薬後2~3ヶ月で甲状腺機能は正常となり、色々な症状は軽快します。
最終的(約2年後が目安)に1日1錠又は2日に1錠の内服となり中止するか継続するかを判断します。
症状が良くなったからといって内服を中断すると症状が再発しやすくなります。
また、薬疹・肝機能障害・顆粒球減少などの副作用が約1割の人に起こるとされており、特に服薬開始後3ヶ月間は注意が必要です。
- バセドウ病のように甲状腺機能亢進となる疾患に亜急性甲状腺炎・無痛性甲状腺炎・プランマー病があります。
これらの中には自然治癒するものもありますので甲状腺機能亢進症を疑ったら甲状腺に詳しい医師を受診される事をお勧めします。 - タバコはバセドウ病の治癒を遅らせると言われているため、喫煙者は是非とも禁煙しましょう。
甲状腺の病気 橋本病(慢性甲状腺炎)について
橋本病(慢性甲状腺炎)について
(1)橋本病とは
甲状腺に慢性の炎症が起きる病気で、日本人の橋本医師が1912年に世界で初めて医学雑誌に報告したことからこの様に名付けられています。
男性より女性に圧倒的に多く、よく調べてみると女性の十数人に一人はこの病気であるとも言われています。
- 甲状腺の腫れ→バセドウ病と同じく腫れの程度は様々です。多くは甲状腺全体が大きくなります。
- 甲状腺機能低下による症状→元気が無い・皮膚の乾燥・寒がり・むくみ・脱毛・ひどい便秘・体重増加・遅い脈
- 後でも述べますが、橋本病は甲状腺の腫れや抗甲状腺抗体の存在から診断します。
よって、橋本病でも甲状腺機能低下となる人は25%くらいと言われており、甲状腺ホルモンが正常の場合が少なくありません。
(3)検査
症状と血液検査でおおよそ診断はつきます。
血液検査で甲状腺ホルモン(FT3、FT4)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)ならびに抗甲状腺抗体の抗サイログロブリン抗体(TgAb)・抗甲状腺腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)を測定します。
(4)治療
甲状腺ホルモンが不足している場合には甲状腺ホルモン剤(チラージンS)を内服します。
多くは数ヵ月後に甲状腺機能は正常化しますが、甲状腺ホルモン剤は長期間継続する場合がほとんどです。抗甲状腺抗体が陽性でも甲状腺ホルモンが正常であれば治療の必要はありません。
- 過去に言われていたような海藻類の制限は必要ありませんが「昆布」の食べすぎと頻回の「ヨードうがい」は控えるようにしましょう。
- 甲状腺ホルモンが不足すると高コレステロール血症になりやすいため、高脂血症と言われている人は一度、甲状腺ホルモンを調べて良いかも知れません。
- まれに橋本病→無痛性甲状腺炎、橋本病→バセドウ病となるなど甲状腺機能亢進が変化する場合があります。
甲状腺のしこり
甲状腺のしこりについて
(1)はじめに
甲状腺にしこりを認めた場合、最も大事な事は良性か悪性か区別する事です。
※しこりの区別については甲状腺を専門に扱う外科の受診をお勧めいたします
良性か悪性かを区別するための検査として
- 医師の触診
- 超音波検査(エコー)
- 細胞診(細い針を甲状腺に刺して細胞を採取し調べる方法)
- 採血(稀に甲状腺ホルモンを過剰に産生するしこりがあります)
※当院では超音波検査(エコー)・細胞診は行なっておりません
(3)良性の腫瘍以下の3種類に分類されます
- 濾胞腺腫(ろうほうせんしゅ)→普通は甲状腺が腫れている以外には症状はありません。多くは、単発(一つ)の腫瘤(しこり)で大きさは様々です。癌の疑いのある場合やしこりが甲状腺ホルモンを産生している場合は手術を考えます。
- 腺腫様甲状腺腫(せんしゅようこうじょうせんしゅ)→甲状腺内に大小様々なしこりを認め、結果として甲状腺全体が大きくなることがあります。癌の疑いのある場合・しこりが甲状腺ホルモンを産生している場合・甲状腺がかなり大きくなり気管や食道を圧迫している場合は手術を考えます。
- 嚢胞(のうほう)→甲状腺のしこりの内容が溶けて液状になったもの。大きい場合や気管や食道を圧迫している場合に、注射針で内容を吸い取る事があります。また、治療法としては確立していませんがアルコールの一種であるエタノールを注入して縮小させるやり方もあります。
- 乳頭癌
- 濾胞癌
- 髄様癌
- 未分化癌
- 悪性リンパ腫